かすみ草の花束を。


「綺麗…」

思わず声に出てしまうほど。
私が顔を近づけると、先輩の目は徐々に大きくなって、顔を背けられてしまった。

「…近い」

「あっ…す、すいません!
先輩の目が、あまりにも綺麗で…見とれてしまいましたっ…!
半径1メートル以内に近づかないように気をつけます!」

えっ…と、なんだったかな……
意味わかってるか聞かれたんだよね?

「意味は…えーっと…」

「…嫉妬」

「…え…」

「嫉妬したんだよ。
俺以外に、俺以上に、仲良い男がいるとかムカつくだろ」

……それって…

え…?
私と雄大のことだよね?

先輩、嫉妬って……え…?

心臓の音がドクドク言って止まらない。

先輩のほうを見ると、なんだか拗ねてる男の子みたいでまた違うところでキュンとしてしまう。

そんなことを言われたら期待してしまうの、先輩はわかってる…?

私のことを"嫌い"だと言った黒崎先輩。
少しは…ほんの少しくらいは、好きになってくれてるんじゃないかって…思ってもいいですか……?

「雄大は弟ですよ…?」

思わずもう一度口にしてしまうその言葉。

「弟でも仲良すぎ…」

弟の雄大に嫉妬したと言う黒崎先輩に、私は今日も恋をしている。ーー


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