かすみ草の花束を。

純side



「…願いとか、俺の中から全部無くなったと思ってたのに」

そう思ってたのに…いつのまにか花咲が、俺が諦めたことや無くした願いを、見つけて拾って、勝手に叶えてくるから。
俺は、夢や希望とか…そんな自分に似合わないものを少しずつ抱きはじめている。

出会った頃から嫌いだったはずなのに、目はこいつを見つけるし、体は近づこうとする。
そばにいると無意識に顔の表情筋が緩むようになって、心臓がいつもより嬉しそうな音を立てる。

それが何を意味するのか、やっぱりわからない…。

けどこいつは、ずっと俺の中で光ってるんだ。
ひとり凍ってた俺は、彼女の温もりで溶かされていくようで……

こいつが笑ってくれるなら俺は何でもできるような気がするし、こいつが悲しくて泣いているならそばで守りたいと思ってしまう。

この感情の名前もまだ知らない俺は、人間として失格なのかもしれないけど……

「俺の願いは、あんたの願いが叶うことだから」

「…っ…!…う~…先輩、そういうの嬉しいんですけど、本当の願い言って下さいよ…っ」

本当の願いなんだけど。

「ほら、織姫様と彦星様に届けましょう…っ」

そう言ってこいつは、上を向いて両手を握るように合わせた。

ほんと人のことばっか…自分の願いは叶ったのかよ……


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