かすみ草の花束を。


「でも…先輩がこんな夜中に外にいると思ったら、心配でしょうがなくて…襲われないかとか……」

……襲われねーよ。
ほんと、何かにつけて心配してきやがって……

こいつ俺が男だってわかってんのか…?

大体、今ここにいるのが俺じゃなくて違う男だったら、あんたのほうが襲われてるっつーの。

はあ…考えただけでムカつく……
自分で呼び出しといてこんなこと言えるわけないけど。

「大丈夫だから。 心配しなくてもチャリで来たからすぐ帰れるし」

「…そうですか…」

俺が大丈夫だと言っても、心配そうな声で返される。

「今日…一番最初には祝えなかったけど、誕生日の一番最後に祝えて良かった」

「…っ、先輩…」

「…じゃ、また明日」

「…はい…また、明日です…お気をつけて」

いつもより小さい声で呟く花咲の声を聞いて、俺は自転車に乗って帰ろうとした。

だが、こいつはいつまでも家の中に入ろうとしない。

「早く中入れ」

「入ります…先輩を見送ったら」

…それじゃ俺が不安なんだよ。

「家に入ったら帰る」

「先輩…それ私のマネです…?」

そう言ってこいつは笑った。
暗くてあんまりよく見えないのがシャクだけど…。


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