かすみ草の花束を。


「…やっと笑った」

「え…?」

「…なんでもない。
早く中入れ。 風邪ひくぞ」

「はい…先輩も、風邪ひかないで下さいね…っ
プレゼント、本当にありがとうございました…! 短冊もっ、感動しました…!」

「わかったから。 早く入れって」

俺がシッシッと手で合図すると、花咲は「おやすみなさい」と一礼して、家の中に入っていった。

俺に対するあいつの願いなんてこれっぽっちのことで、名前を呼んでほしいとか全然大したことじゃないし……

今だってプレゼントを渡しに来たつもりがプレゼント返しされ、ちゃんと彼女を祝えたのかと少しモヤモヤしたりしてるのに、正直喜んでる自分がいることに腹が立つ。

なんかやっぱり、あいつといると心が落ち着くっていうか…癒されてんのか…?

小動物的な…?
ちっこいし。

あいつが言う言葉とか、仕草とか声とか、もう全部見てたいし聞いてたいと思う。

"ありがとう"と泣いて喜ぶ花咲を思い出し、俺は自分でも気づかないうちに笑顔になっていた。ーー


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