かすみ草の花束を。


「純は何時に帰るかわかりませんが、良かったら家上がって待たれますか?
私も急遽15時から仕事が入ってしまいまして、少ししかお供できないのですが…」

「お邪魔しても、いいんですか…?」

私がそう聞くと、笑顔で頷き「どうぞ」と中に案内してくれる。
中に入ると、黒崎先輩の匂いがしてすぐに胸がドキドキした。

まるで先輩に、抱きしめられてるみたい……

あ、また変態なこと考えてた…
いかんいかん!

私は首を横に振って、意識を鼻から目に集中させる。
シンプルな家具や、モノが最小限しか置いていないこの家は、とても黒崎先輩っぽいなと思った。

「花咲さん、仕事の時間まで私に付き合っていただけませんか? 純の話、聞きたいんです」

「お父様にお話しできることがあるのかわからないですが…それでいいのなら、是非!
私も先輩のこと、聞きたいです…!」

「花咲さんは、素敵な方ですね…まっすぐで、素直で、かわいくて。 純もあなたに心を許してるでしょう?」

そう言ってパパさんは穏やかに笑っている。
言われ慣れない言葉に恥ずかしくなりつつ、先輩が私に心を許してるだなんて滅相もないことで、首を横にブンブン振った。


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