かすみ草の花束を。


「お母様…先輩に出会えた奇跡をっ
ありがとうございます…!」

私はお母さんの遺影に頭を下げ、リビングに戻る。

「先輩の、部屋…」

先輩にすごく会いたくなって…
『なんで泣いてんだよ』って笑って言ってくれそうで…

先輩はまだ帰ってないというのに、私の足は先輩の部屋があるという2階に向かっていた。

あの日から、声すら聞いてない…
まだ夏休みだから会えないのもあるけど、よく耐えられたと思う。

ガチャっとドアを開けると、黒崎先輩らしい黒でまとめられたシンプルな部屋がそこにあった。

その部屋はより一層黒崎先輩の匂いに包まれていて、私の心臓は勝手にドキドキしてくる。
周りに物はほとんど何もない。

あ、ベットの下にあれかな?
エロチックな本、なんてあったり…

私はそろーっとベットの下を盗み見た。

「うーん…」

何も見当たらず、ベットの下さえシンプル。
残念なような…だけどあったらあったでショック受けてる気がするけど…。

先輩、私がいたらビックリするかな?

そりゃあビックリするか…

怒られるかな?

うん、怒られそう…

どんな言葉でもいい。

先輩の返事を、先輩の気持ちを、聞かせてほしい…な…ーー


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