かすみ草の花束を。
嘘と真実

小枝side


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夏休みも終わり、9月に入って2週間が経った。
学校内では徐々に文化祭に向けた準備が始まっている。

もう、ほとんど先輩の姿は見ていない。

学校で黒崎先輩に会わないように、見つけたとしても先輩に気づかれないように隠れたりしていたら、私が黒崎先輩についに完全にフラれたのだという噂が広まった。
これは噂ではなく事実。
本当にフラれてしまったのだ。

美羽や流川先輩には、莉乃さんのことは言ってない。
黒崎先輩が言ってないことを私が勝手に言うわけにはいかないから。
私は勝手に聞いてしまったのだけど…

「花咲さん、ちょっと…いいですか?」

「はい…」

……まただ…。
噂が広まってから、こうやって呼び出されることが多くなった。

「ずっと、花咲さんのことが…好きでした。 友達からでいいので、俺と付き合ってくれませんか?」

裏庭まで彼について来た私は、人気のない場所で告白される。
その人は人気の男子で、黒崎先輩や流川先輩と同じようにキャーキャー騒がれているところをよく目にする同級生だった。

顔は整っているが目つきが悪い。
というよりも、これはもはや目が死んでいる、と言ったらいいのだろうか…
睨まれているような気もするが、きっといい人なんだと思う。

だけどやっぱり……

「ごめんなさい」

私の口は勝手にこう答えてしまうのだ。

「今はそういうの考えられなくて…」

「まだ黒崎先輩のことが、好きなんですか?」

そう言われ、どう返していいかわからず黙り込む。


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