かすみ草の花束を。


「好きなんですね」

その人は私の目をじーっと見つめてそう言った。
悪口のつもりではないけど、本当に目が死んでいる……
けどイケメンなのがすごい。

「いつもの光景、見なくなったから…」

彼がポツリとこぼした言葉は、きっと私が黒崎先輩を追いかけていく姿。
毎日のように追いかけていた私は、周りから見ればさぞ滑稽に見えていただろう。

わざわざフラれに言っているようなものだったのだから。
最初の頃の私は、ただ黒崎先輩に気持ちを伝えたくて、何も考えずがむしゃらに走っていた。

そんな私を見て、黒崎先輩はどう思っていたかな。
やっぱり、鬱陶しくて面倒くさかっただろうな…

なのに先輩はやっぱり優しいから、許してくれた。
だからつい、欲張って調子に乗ってしまったんだ。

黒崎先輩を思うと、どうしても目に溜まっていく涙が外に出たいと叫ぶ。
私はいつからこんなに涙脆くなったのだろうか……
どうして気持ちの我慢ができなくなって、こんなにワガママになってしまったのだろうか……

もう絶対泣かないと決めたのに…ーー

「…っ!」

涙を決してこぼさないよう顔にぎゅっと力を込めていた私の頭に、ポンと何かがあたった。
目の前にいるその人を見上げると、手は私の頭にあるが、顔はそっぽを向いている。


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