かすみ草の花束を。
ちょっと早く着きすぎちゃったかな……
そう思いながら、ガラス張りになっていて外の見えるカウンター席に座る。
雨……
外はやっぱり雨が降っていて、普段だったらもっと人がいるこのカフェも、雨宿りに使ったりする人や、パソコンで仕事をしている人はいるものの、全体的に少ないほうだった。
昨日、黒崎先輩の口から聞いた、この街を出てからの出来事。
それは私が莉乃さんから直接聞いたこととまるで違っていた。
莉乃さんは私に嘘をついたということになる。
それだけ私の存在が、目障りで鬱陶しくて、先輩にとって特別に見えたのかもしれない。
先輩にとって特別な子は、他にいるというのに……ーー
莉乃さんにとって先輩は好きな人?
わからない……
私は好きな人をひとりぼっちにしたいとは思わないから。
だけど確実に言えるのは、もし莉乃さんが先輩をひとりにしたいのなら、私はそれを全力で阻止するということ。
闘うということ。
悔しかった……
先輩のことを知って、苦しくなった……
私のことも守ろうとしてあんなことを言ったんだと思ったら、それに気づけないでそばを離れようとした自分が情けなくなった。
もし今その時の自分に戻れるなら、一発殴ってやりたい。
「何やってんだバカヤロー…!」って。