かすみ草の花束を。

純side


ーーーーーー

あの日と同じ雨…

そんなことを考えていた俺が、朝から父さんに聞かされたのは、驚く内容だった。

それは昨日花咲から電話があって、冬夜の住所を教えてほしいと頼まれたということ。
それで今日待ち合わせをして、一緒に行くことになっていること。

『父さんは他に用があるから、純が代わりに連れていってあげなさい』ーー

昨日あれだけいいって言ったのに、まだあいつは諦めてなかった。
バカがつくほどまっすぐで一生懸命で、騙されても傷つけられても誰のせいにもせず、最後は笑って許してしまう。
そんな優しいやつ。

俺は気づけば走りだして、あいつに会いに行っていた。
雨の中、傘をさして。

俺のために、どうしてそこまでできんだよ……

もう二度と彼女を傷つけない。
……二度と、離れてたまるか…っ

父さんに言われた待ち合わせ場所であるカフェに着くと、花咲の姿は見当たらなかった。
店内はさほど人が多くなかったので、いないことは一目瞭然。

まだ来てないのか…?

左手につけている腕時計を見ると、待ち合わせ時間は過ぎている。
花咲に電話をかけるが繋がらなかった。

「あの、もしかして…身長の小さくて、可愛らしい女の子を探していますか…?」

「…!」

そこのカフェ店員は、何かを知っているのか俺に声をかけた。


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