かすみ草の花束を。
美羽side
「あ、幸枝さん?
雷にみんな動揺してると思うけど…大丈夫だよ。
信頼できる人が…絶対連れて帰るって、約束してくれたから。
うん…じゃあ、また連絡します」
私は小枝のお母さんにそう伝えて通話を切る。
どうしてかな…
最初はあんなに信用ならなかった黒崎先輩を、今は小枝には黒崎先輩しかいない、とまで思ってしまうようになったのは。
「ねぇ、美羽ちゃん。
それで、花咲さんは…どうなったの? 自力で帰れた?」
焦るあまり流川先輩の家にお邪魔していた私は、その言葉に首を横に振った。
「小枝は背中を打っただけじゃなくて…いろんなところにケガをしていました……
小さい体はボロボロで、意識もなくなりそうな中、見つけてもらえる確率も低かったのに…たまたま通りかかった子が、偶然見つけて助けてくれたと」
「…そっか…花咲さんにそんなことがあったなんて、全然わからなかったな……いつも笑ってたから」
「ずっと…後悔してます。
私があの日、小枝と一緒に帰っていれば、あんなことにはならなかった…」
あの日、小枝は宿題のやり直しをして帰ると言った。
どうして一緒に残らなかったのかと、今でもずっと思ってる。
習い事から帰った私を待ってたのは、人生で一番の恐怖だった。