かすみ草の花束を。


体も硬くなって全然動かない。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

苦しい…っ

ーーガタッ

「…花咲っ…」

………あ、れ…空耳……?

今先輩の声が聞こえた気がした。

「やっと見つけた……」

ぼやけているが、声の聞こえる扉から先輩の姿も見える。

あぁ、今日もなんてかっこいい……
もしかして、私……もう死んでるの…?

だけど呼吸は苦しいまま。

「……過呼吸か…」

すぐそばで先輩の声が耳に響いた。

「花咲。 俺の声を聞いて。

…ゆっくり、息して」

そう言って、私の背中を暖かい手でさすってくれる。

「…すー…はー…」

「うん、だいぶ落ち着いたな」

私はその声のするほうを見てやっと理解する。
黒崎先輩が、座り込む私の目の前にちゃんといることを。

「せんぱい…どうして、この場所が…?」

あんな隠し扉でわかるはずないのに…

先輩は私の手足を拘束していた縄を解いてくれた。

「あ、ありがとうございます…」

「さっき雷で揺れた時、一瞬だけど扉の線が見えたんだ。 まさかと思って押してみたら開いた。 雷のおかげって言ったら、花咲は怒るだろうけど…」

「……聞いたんですか? 美羽…?」

「あぁ…さっき電話で教えてくれた。 今も心配してる」

みんなにまた、心配かけてしまったな……

さっきまであんなにビクビクしていた私の体は、黒崎先輩がそばにいるとわかると、こんなに安心して、震えもだいぶ治まっていた。


< 341 / 396 >

この作品をシェア

pagetop