かすみ草の花束を。

小枝side


ーーーーーー

「やー…! かわいいです!
黒崎先輩が珍しく泣いてます…!

あ、こっちはなんだか少し、拗ねてる…!?」

黒崎先輩のお師匠さんに、道場に通っていた頃の先輩のお写真を見せてもらうと、そこに写っていたのは、なんともかわいくも凛々しい今よりずいぶん幼い黒崎先輩。

「最初入った頃はへなちょこだったからね~!
できないって悔しがって泣いたこともあったんだよ」

「黒崎先輩にそんな時期が…っ!」

しかしその写真の小さな黒崎先輩は、なぜかどこかで見たことがあるような気がした。

「そうそう。
今はあんなスンってしてるけど、この頃はすごいへなちょこボーイだったんだよ~~?」

「…師匠…、帰る前に一発殴らせてもらえますか…」

「…!?」

その声に私は勢いよく後ろを振り向く。
そこには黒崎先輩と、片手でひらひらと手を振る冬夜さんの姿があった。

二人を交互に見て、安心する。
あぁ、気持ちがひとつになったと。

黒崎先輩も泣いたあとのような潤んだ目をしているが、ずっと刺さっていたトゲがとれたような…どこかそんな雰囲気だった。

「純ちゃんこわーい!
小枝ちゃん僕を守って~~!」

「え"」

師匠さんはそう言って私の背中に隠れるように移動する。

「その小枝ちゃん呼びもやめてほしいんですけど」

「…っ!」

小枝ちゃん…!?
先輩が小枝ちゃんて言った…!

はああああ、やばいやばいやばーい!!


< 376 / 396 >

この作品をシェア

pagetop