かすみ草の花束を。

美羽side



「…いいんですか?」

「ん? 何が?」

自動販売機の前で、いつものにこやか笑顔でジュースを選んでる流川先輩に問いかける。

「小枝のこと…本当は好きなんですよね…?」

ずっと思ってた。

小枝といるときの流川先輩はみんなに見せるような笑顔じゃなくて、本当の笑顔を見ているような……
そういう意味では、黒崎先輩も流川先輩も似てるのかもしれない。

流川先輩の場合は、もともと良い印象を持たれているから、その印象を崩しちゃいけないという仮面を常に貼り付けているような…そんな感じがする。

「…え!?」

流川先輩は驚いた顔をして、後ろに立っていた私に視線を移した。

「辛くないですか…? 流川先輩は、どこまで人がいいんですか…?」

「え、ちょっと待って町野さん。話が見えない。
とゆうか、俺が花咲さんを好きだと思ってるの…?」

そう言った流川先輩の目は少しだけ悲しい目をしているみたい。

「違うんですか…? 私になら、本当のこと言っても大丈夫です。 黒崎先輩にも小枝にも、誰にもいいませんから……」

「…違うんだけど」

「うそ…私わかってます。
…小枝の前でだけ、本当の先輩の笑顔になること。 小枝を、大切に思ってくれてるって伝わってるから…」

「何を言うかと思ったら…俺の気持ちは全然伝わってないんだね」

気持ち?

小枝のことが好きで、だけど小枝は黒崎先輩が好きで、黒崎先輩のことも大事だからって…
自分の気持ちを我慢して、辛くても二人を応援しようとしてるんじゃないの…?


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