どうも、弟です。

「一花ちゃんにこんな辛いこと言わせたくなかったから、俺から言わせてよ」


秋くんは、繋いでいた手をそっと離す。

それと同時に私もしっかり秋くんと向き合った。


「公園で話したこと、覚えてる?」

「……うん」

「雪の分も…って言い方したら雪に悪いかも知れないけど、親や身の周りの人になるべく迷惑かけないように、大人ぶってたんだよね。自分の気持ちに嘘をついて、上っ面の笑顔で。そうしたら自然と、いい子の俺の周りにはいつの間にかたくさんの人の輪ができてた」


秋くんが、親御さんに迷惑をかけないよう振る舞ってきたのはわかる。

きっとどんなときも周りの人に気を遣って、自分にできることを探して。

秋くんは上っ面の笑顔って言うけど、上っ面でさえ笑顔を作れない人もいるんだから、それはきっとすごいことなんだと思うよ。


「それでも、不思議と一花ちゃんは周りとは違う気がしたんだ。本当の俺も受け止めてくれるような気がして……さ」

「私が、秋くんを受け止める…?」

「雪や、一花ちゃんの気持ちに気づいて、渡したくないって思うようになった。大人げないけど、兄貴失格だけど、『俺』を見てくれる一花ちゃんを渡したくなかった」

「……っ」


秋くんの言ってること、なんだかわかる気がする。

私を見て欲しい。

何度、あなたに対してそう思ったことか。



< 162 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop