どうも、弟です。
「一花ちゃんにこんな辛いこと言わせたくなかったから、俺から言わせてよ」
秋くんは、繋いでいた手をそっと離す。
それと同時に私もしっかり秋くんと向き合った。
「公園で話したこと、覚えてる?」
「……うん」
「雪の分も…って言い方したら雪に悪いかも知れないけど、親や身の周りの人になるべく迷惑かけないように、大人ぶってたんだよね。自分の気持ちに嘘をついて、上っ面の笑顔で。そうしたら自然と、いい子の俺の周りにはいつの間にかたくさんの人の輪ができてた」
秋くんが、親御さんに迷惑をかけないよう振る舞ってきたのはわかる。
きっとどんなときも周りの人に気を遣って、自分にできることを探して。
秋くんは上っ面の笑顔って言うけど、上っ面でさえ笑顔を作れない人もいるんだから、それはきっとすごいことなんだと思うよ。
「それでも、不思議と一花ちゃんは周りとは違う気がしたんだ。本当の俺も受け止めてくれるような気がして……さ」
「私が、秋くんを受け止める…?」
「雪や、一花ちゃんの気持ちに気づいて、渡したくないって思うようになった。大人げないけど、兄貴失格だけど、『俺』を見てくれる一花ちゃんを渡したくなかった」
「……っ」
秋くんの言ってること、なんだかわかる気がする。
私を見て欲しい。
何度、あなたに対してそう思ったことか。