愛は惜しみなく与う③

「なんだ?」

携帯ゲームから目を離さずに返事する。

そんな朔の携帯を泉はパッと取った


「おい、何すんだよ!今オンラインで対戦中なのに!」

「いいから黙って聞け」


携帯を取り返そうと、暴れる朔の手を、泉は片手で止める

そして言った



「お前の親父さんが、新の家を訪ねてきたらしい」



朔の、親父さん?
泉の少し言いづらそうにしている話し方と、朔の顔を見て

朔の親父さんは、あまりいい印象ではないのだろうと感じ取った



「……あっそう。新にあとで謝っとくわ」



何か言おうとしたが、言葉を飲み込み、朔は言う。
おかしい。
こんな冷静に言葉を選べるのは、朔らしくない


あんな顔したのに



「大丈夫か?」

「なんで?別に大丈夫だ」

「どうして訪ねてきたか、気にならないのか?」


泉は眉を下げて、悲しそうな顔で朔を覗き込む




「……どうだっていいよ。あいつはもう、赤の他人だから」



あぁ
またひとつ、黒いものが見える

朔の心の中に


志木は前を向いているが、何かを考えているような、そんな顔をしていた
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