黒と白の境界線〜心理学者の華麗な事件簿〜
末良刑事の推理を聞き、京は犯人の人物像を推測し始める。

「体の自由を奪っただけで、被害者に意識はあった。そして生きたまま蛇に襲われた。つまり、犯人は被害者に対して苦痛を感じてほしかった。犯人は被害者を憎んでいたかもしれないわ」

「なるほど」

末良刑事と遼河が同時に言う。京は立ち上がり、「事件現場を見せて」と支度を始めた。



事件現場となった廃墟は、診療所から四十分ほどの場所にあった。周りは木々に囲まれ、荒れ放題だ。

「不気味ですね。本当に幽霊が出そう……」

遼河は怯えるが、京は気にすることなく「事件のあった部屋はどこなの?」と末良刑事に訊ねる。

「こっちだ」

末良刑事に案内され、京と遼河は黄色のテープをくぐる。そして、埃の積もった廊下を歩いて事件のあった部屋へとやって来た。

「ここ、綺麗にしていれば絶対に立派な豪邸ですよね」

遼河がキョロキョロと部屋を見回す。部屋の広さは二十畳ほどで、家具などはない。埃の積もったフローリングが広がっている。
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