黒と白の境界線〜心理学者の華麗な事件簿〜



「……っていう事件があったんだ」

次の日、診療所が閉まる直前に黒いスーツを着た男性にしては低めの身長の人物がやって来た。京は驚くことなく椅子に座り、男性の話を聞く。

男性の名は、末良昴(すえよしすばる)。警視庁の刑事でよく京を訪ねてくる。犯人の心理を京に教えてもらうためだ。

「捜査したところ、遺体は赤坂巴(あかさかともえ)だと判明した。バーのホステルをしている。死因は沼マムシに首筋を噛まれ、その毒によるものだ」

「沼マムシですって?日本にいるはずのない蛇じゃない」

沼マムシは、主にアフリカ東部から南部にかけての地域に生息している。日本にいることなどありえない。驚く京に、末良刑事は続ける。

「遺体を調べたところ、首筋には被害者の血液の他に豚の血液が混ざっていた。さらに胃の中からは体を一時的に麻痺させる薬も見つかった。つまり、何者かが被害者の体の自由を奪い、首に血を塗って蛇に襲わせた可能性が高い!」
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