探偵さんの、宝物
 ***

「それでは、見掛けたらご連絡しますので」
「ええ、よろしくお願いします」

 二人で佐々木さんを見送った。
 僕は見慣れた玄関のドアが閉まるのを、複雑な気持ちで見ていた。



 ――さっきはもう少しで、尾花さんをデートに誘えたのに。

 昨日からイメージトレーニングしていたのに、まさか失敗するとは。
 下調べ、計画、準備の他に、運も必要だったんだな……。

「楓堂さん。私、お昼休憩の間に月子ちゃんを探して来ようと思います」

 顔で笑い心で泣いている僕に、尾花さんはそう言った。
 月子ちゃんと言うのは猫の名前だ。

「何か当てがあるんですか?」
「はい、予知夢を見たんです。きっと見つけられます」

 彼女はしっかりと頷く。
 その後急に不安げに身体を揺らして、上目遣いで僕を見て言った。

「……それで、あの。
 楓堂さんにもついてきてもらえたら、嬉しいんですけど」

「いいですよ、僕で力になれるのなら」
 笑顔で答えた。
 断る訳がなかった。尾花さんにお願いされたのが嬉しかった。



 追加で「汚れても大丈夫な服装で来てくださいね」と言われたので、ジーパンとパーカーに着替えた。

 ……そこで僕は気付く。その予知夢では尾花さんではなく、僕が猫を捕まえていたんだろうな、と。
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