探偵さんの、宝物
 猫の月子ちゃんの件で見つけた喫茶店のカウンターで、オムライスランチを二つ頼んだ。レトロな内装が可愛い店だ。

 ランチにはサラダとコーヒーがついてくる。
 ライスはケチャップ味で、チキンの代わりに牛挽き肉がごろごろ入っていた。それがつるつるの薄焼き卵で巻かれ、その上に新鮮な果肉がたっぷりのトマトソースがかかっている。
 いつも通り美味しかった。

「今朝もストーカーによる傷害事件があったらしいですね」
 食後のコーヒーを飲んでいると、楓堂さんが呟いた。
 サイフォンで淹れられたコーヒーは、香りは華やかで表面に適度な油が浮いている。
 彼はスマホアプリでニュースを見ていたらしい。

「尾花さんも、もし何かあれば相談してくださいね」

 何か、あると言えばあるんだよね。
 でも、自意識過剰とか思われないかな。

「何か、気になることがあるんですね?」
 迷っていると、楓堂さんが私を覗き込んで言った。

「ええ、ちょっと。
 この頃、探偵事務所から帰るときに帽子を被った男性がついてくるんです。
 被害はないので気にしてないんですけどね」
 軽い感じに言うと、彼は眉間に皺を寄せた。

「それは、気にしなきゃ駄目でしょう」
「は、はい」
 真剣な目と、怒りを孕んだような声に、私は気圧された。
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