探偵さんの、宝物
「犯人に心当たりはありませんか?」
「心当たり……」
思い当たるところがなく、首をひねる。
「ストーカーの加害者で一番多いのは、被害者の元交際相手のパターンですね」
彼は元交際相手、の部分を強調して言った。
「交際相手……。いえ、そんなはずはないと思います。そういうことをする人じゃない」
私は三年前に別れた人のことを思い出して、首を振った。
「……そうですか。その人のこと、信じているんですね」
楓堂さんは先ほどより低いトーンで、呟くように言う。
彼が挙げた候補をすぐに否定してしまったのがまずかったのかもしれない。
「いえ、信じているというか、何となく違うと思っただけです」
慌てて顔の前で両手を振って否定する。
「あの、私が怪しいと思うのはですね。
楓堂さんの元恋人とか、楓堂さんのことが好きな人です。
私が一緒にいるのを見て、勘違いして嫌がらせをしているとか」
私は人差し指を立てて、真面目な顔をして言った。
「ははは、そんなことはないでしょう」
彼はあっけらかんと笑った。
いやいや、かなり可能性高いと思うけどな。実際、明らかに媚びた声になる相談者さんもいるし。
楓堂さんは、またすぐに真剣な顔に戻る。
「尾花さん、今日帰る時は僕がついていきますね」
「え?」
「尾花さんの後を、僕が一定の距離を空けてついていきます。
そしてストーカーがつきまといをしている証拠を撮影します」
その内容は、今楓堂さんが受けている女子高生の件と同じだった。
「そこまでして頂くなんて悪いですよ……」
私は恐縮する。楓堂さんが仕事としてお金を貰ってやっていることを、私なんかのためにしてもらうなんて……。
それでも彼は、断固として退かなかった。
「貴女が嫌だと言ってもそうしますから。やらずに後悔するよりずっと良い」