探偵さんの、宝物
四節【映画デートと桜紅葉】
正面のスクリーンは眩しく輝き、大迫力の音楽が座席を揺らす。
暗い映画館の中、私と楓堂さんは肘掛けを挟んで隣同士に座っていた。
『用済みだ、消せ』
葉巻をくわえたボスが言う。
ボスの屋敷の中に作られた、宮殿風のマグマ風呂――トーキョーには灼熱の赤い温泉が湧いているらしい、入ると死ぬ――の上で、ロープに吊り下げられた女スパイは何も言わずに唇を噛み締める。
スナイパーがロープを撃ち、彼女は真っ逆さまにマグマへ落ちてゆく。
死を覚悟する女スパイ……。
その時、どこからともなく声が聞こえた。
『助太刀致す』
ステンドグラスが割れ、天井の天使像に鉤縄が掛かる。
スタイリッシュに現れた忍者は、疾風迅雷の勢いで棒手裏剣を打ち雑魚を一掃。
落下中の女スパイを攫うように抱き留めた。
『なんで、助けに来たのよ……。
アタシは、あんたを裏切ったのよ!?』
『ならば償え、その身を以て。
二度と離れることは許さん』
――ストーリーはクライマックスを迎える。
主人公たちはお互いに引き寄せられるように、情熱的なキスをした。
そのシーンを見てから、私は無意識に右隣の楓堂さんに目を向けた。
すると、目が合った。
私は笑って誤魔化した。
鏡のように彼も笑った。
暗い映画館の中、私と楓堂さんは肘掛けを挟んで隣同士に座っていた。
『用済みだ、消せ』
葉巻をくわえたボスが言う。
ボスの屋敷の中に作られた、宮殿風のマグマ風呂――トーキョーには灼熱の赤い温泉が湧いているらしい、入ると死ぬ――の上で、ロープに吊り下げられた女スパイは何も言わずに唇を噛み締める。
スナイパーがロープを撃ち、彼女は真っ逆さまにマグマへ落ちてゆく。
死を覚悟する女スパイ……。
その時、どこからともなく声が聞こえた。
『助太刀致す』
ステンドグラスが割れ、天井の天使像に鉤縄が掛かる。
スタイリッシュに現れた忍者は、疾風迅雷の勢いで棒手裏剣を打ち雑魚を一掃。
落下中の女スパイを攫うように抱き留めた。
『なんで、助けに来たのよ……。
アタシは、あんたを裏切ったのよ!?』
『ならば償え、その身を以て。
二度と離れることは許さん』
――ストーリーはクライマックスを迎える。
主人公たちはお互いに引き寄せられるように、情熱的なキスをした。
そのシーンを見てから、私は無意識に右隣の楓堂さんに目を向けた。
すると、目が合った。
私は笑って誤魔化した。
鏡のように彼も笑った。