探偵さんの、宝物
「さて、ここに美味しいお菓子の入った箱があります」
尾花さんは赤い紙袋から茶色の小箱を取り出した。
それをマジシャンのように僕に良く見せる。
「それでは楓堂さん、目を瞑ってください」
「ええと、僕、何かされるんですか?」
自信ありげな様子の彼女に聞く。
僕の目は彼女の一挙手一投足に釘付けになっている。
「大丈夫、痛いことはしませんよ」
そう言われると、余計に背中がぞくぞくした。
痛くなく、つまり優しく『何か』をしてくれる訳だ。
僕は背徳的な期待を膨らませながら、目を瞑った。
「……はい、目を開けてください」
特に、何かされた感じはなかった。
拍子抜けした気持ちで目を開ける。
お菓子の箱が、尾花さんの手の中からなくなっていた。
「推理で見つけてみてください。そしたら差し上げますよ」
尾花さんはそう言って、いたずらっぽく笑った。
僕は思い出した。
子供の頃の彼女は、こんな風に小さないたずらをするのが好きだった。
「なるほど、受けて立ちましょう」
僕は辺りを見回す。
赤い紙袋は机に置いてあったが、空だった。
椅子の上や本棚も見たが、無い。
「ふふふ」
彼女は探す僕を見て、口元に手をあてて笑っていた。
背中に隠していたりしないだろうか、と思い、僕は彼女自身に目を向けた。
しかし両手は体の前側にあるので見えている。
僕が観察していると、彼女は慌てたように手を振った。
「あ、服の中には隠してませんよ?」
――流石にそこは、探せない。
いや、探して良いと言われたら喜んで探すけど。
「本当ですか?」
僕はわざと真剣な顔をして、尾花さんに近付いた。
本気で服の中に隠してるとは思っていない。ちょっとした仕返しだった。
「ほ、本当ですよ」
頬を赤くして、縮こまる彼女は可愛い。
……こつん。
僕の脳天に、何かが降ってきてぶつかった。
落ちていくそれを反射的に手で受け止める。
茶色いお菓子の箱だった。
「あ、ごめんなさい!」
どうやら、サイコキネシスで僕の上に浮かばせていたらしい。
道理で見つからないわけだ。
……それが落ちてきたと言うことは、彼女の集中力が切れたんだ。
さっき、かなり動揺していたんだな。
「見つけました、ありがたく頂きます」
重さから推測すると、中身はチョコレートだ。
「はい、どうぞ」
彼女は嬉しそうに言った。
……しかし僕はここで話を終える気はなかった。
「なるほど、尾花さんはこういうことするんですね。
それなら僕にも考えがありますよ?」
尾花さんは赤い紙袋から茶色の小箱を取り出した。
それをマジシャンのように僕に良く見せる。
「それでは楓堂さん、目を瞑ってください」
「ええと、僕、何かされるんですか?」
自信ありげな様子の彼女に聞く。
僕の目は彼女の一挙手一投足に釘付けになっている。
「大丈夫、痛いことはしませんよ」
そう言われると、余計に背中がぞくぞくした。
痛くなく、つまり優しく『何か』をしてくれる訳だ。
僕は背徳的な期待を膨らませながら、目を瞑った。
「……はい、目を開けてください」
特に、何かされた感じはなかった。
拍子抜けした気持ちで目を開ける。
お菓子の箱が、尾花さんの手の中からなくなっていた。
「推理で見つけてみてください。そしたら差し上げますよ」
尾花さんはそう言って、いたずらっぽく笑った。
僕は思い出した。
子供の頃の彼女は、こんな風に小さないたずらをするのが好きだった。
「なるほど、受けて立ちましょう」
僕は辺りを見回す。
赤い紙袋は机に置いてあったが、空だった。
椅子の上や本棚も見たが、無い。
「ふふふ」
彼女は探す僕を見て、口元に手をあてて笑っていた。
背中に隠していたりしないだろうか、と思い、僕は彼女自身に目を向けた。
しかし両手は体の前側にあるので見えている。
僕が観察していると、彼女は慌てたように手を振った。
「あ、服の中には隠してませんよ?」
――流石にそこは、探せない。
いや、探して良いと言われたら喜んで探すけど。
「本当ですか?」
僕はわざと真剣な顔をして、尾花さんに近付いた。
本気で服の中に隠してるとは思っていない。ちょっとした仕返しだった。
「ほ、本当ですよ」
頬を赤くして、縮こまる彼女は可愛い。
……こつん。
僕の脳天に、何かが降ってきてぶつかった。
落ちていくそれを反射的に手で受け止める。
茶色いお菓子の箱だった。
「あ、ごめんなさい!」
どうやら、サイコキネシスで僕の上に浮かばせていたらしい。
道理で見つからないわけだ。
……それが落ちてきたと言うことは、彼女の集中力が切れたんだ。
さっき、かなり動揺していたんだな。
「見つけました、ありがたく頂きます」
重さから推測すると、中身はチョコレートだ。
「はい、どうぞ」
彼女は嬉しそうに言った。
……しかし僕はここで話を終える気はなかった。
「なるほど、尾花さんはこういうことするんですね。
それなら僕にも考えがありますよ?」