消えかけの灯火 ー 5日間の運命 ー



「……未来が見える……んだよな。先のことがわかってるんなら、なんで怯えたりしてたんだよ?あの時、手、震えてただろ…………」
「怯えてないわよ!」

俺の質問を覆いかぶせるかのように、凛は大きな声を上げて言った。

き、聞いちゃいけなかったか……?

「あ、あぁ、わかったって」

俺は「まぁまぁ」と怒りのオーラを抑えるように、両方の手の平を前に出す。

「怯えてなんか、ないわよ……」

でもその直後、怒ったかと思えば今度は悲しそうな顔を見せた凜。
さっきも震えてたし、まぁ、ワケありってやつかもしれない。
そっとしておこう。

「生まれつきなのか?その……能力は」

俺は話題を少し前に戻す。

「そうかも。物心ついた時から、視えていたから。」

凛は平常心を取り戻したようで、俺はひとまず安心した。

「大変じゃねーの?すれ違う人みんなの未来が見えるんだろ?」
「全員なわけじゃない。私が視えるのは、“100%死ぬ人”の未来なの。」
「100パー……セント……」
「少しの事故や怪我なら視えない。だけど確実に死ぬ人の未来なら、はっきりと視える。いつ死ぬか、どんな死に方をするか……がね。視たくなくても。」
「…………」

話している感じ、凛が嘘をついているような素振りはない。
でも……。

「こんな能力、信じてもらえるわけがないから、視えてしまった人に何度忠告しても気持ち悪がられるだけだった。案の定、忠告した人はみんな死んだわ。その度に、私の力は本物なんだって思い知らされた。」
「俺にも気持ち悪がられるとか思わなかったわけ?」
「思ったわよ。今だって思ってる。だけど放っておけないのよ。人が死ぬのをわかっていて、無視できる?わかっていて何も言わないなんて、そんなの見捨てているのと一緒よ。」

凛からは、使命のようなものを感じた。
その力が本物なら、忠告をすることで人の死を防げるかもしれない。
凛はそう思って今までも、今回も、行動を起こしたのだろう。

「……俺のことは、放っておいてくれていいから。」
「……え?」
「俺はいいんだ。死んでも。そういう運命なら、俺は無理に逆らったりしない」
「……何言ってんの?」

俺が言ったことに、凛は驚いていたようだった。

「俺は、死ななきゃならない運命なんだよ。」


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