悪魔になった天使
まるで堕天使のような姿で、腰に刀を差している。どこから伴う神々しいオーラをまとい、ゆっくりと地面に降り立った。
「さて、あなたがたには少々残念ではありますが、消えていただきます。まぁ、抵抗なさらずに頂ければ、一瞬であの世へ行けますから、どうかご承認ください。」
これに対し璃珈は、刀を抜き、片手で構えた。
「急に出て消えていただくって言われて、はいそうですかって、言うわけないでしょ。それに、神風家は、神の僕のはず、神の勝手がここで通用するとでも?」
乃愛は、それを笑いながら首を左右に降った。
「神ですって、そんな生ちょろいものじゃないですよ。私たちは、創造神のお導きのままに従っているまで。」
驚きの証言を聞かされ鮫風家一行は顔を見合せた。
「そんな、まさか創造神ご自身が勝手なことを申されるわけ」
「それが、あるんですよ。主である、創造神から直接、貴方たち鮫風家と半身2人は、私たちのやることに支障が出るから消せと、そうおっしゃられたのですから」
璃珈は、疑いながら乃愛の話を聞いていた。そして、たちまち体が震えだし、いつの間にか、乃愛に斬りかかっていた。
「ちょっ、まだ話の途中ですが?おっ、危な」
一撃目を交わされその次を速く付きだしたが、乃愛は、寸前のところで右へ左へまたはしゃがみながらも転がり避け続ける。
璃珈の手には汗が滲み刀の重さに片手では耐えきれなくなってきていた。
「今ので二十回目の斬撃ですが、どれも当たらなければどうと言うことはありませんよ。次期当主さん、にしし」
さらに乃愛の笑いにイラついたら璃珈は、刀の持ち方を変えた。いわゆるくの一握りで、今度はスピードにのせた斬撃を繰り出す。そのスピードに追い付けず、乃愛は避けるのが遅れてしまった。
「ぐあ、・・いってて、急にスピード変えるとかなしですよ。避けれないじゃないですか。もぅ。」
「そりゃ、当たり前でしょ。避けられちゃ困るもの。それに、今の一撃で刀に血が染み付いたことだし、妖刀の力使ってみようかな。ね、血鮫。」
その言葉に反応した刀は、乃愛の血が付着した部分をまるで吸い取るように薄れていく。妖刀血鮫。これが、昔璃珈が小さいときから使っている刀なのだ。
「血鮫って、あの禁術と同類のたしか、鮫風血鮫が封印された刀とされている、妖刀!」
璃珈は、乃愛の言葉に少し頷き、振り返った。その顔は悪魔のような笑みを浮かべて、ドラキュラのように血を求めている目付きになった。
乃愛は自分の体の血がまだ、止まらないことに焦りを感じていた。なぜなら
「血鮫、解錠、あのこの血を全て啜れ、そして、そのまま肉体の内蔵を食い、この野原を血の色に染めよ。血泉!」
その瞬間、璃珈の下から血が広がり始め、火鉢たちはそこから遠ざかるように飛び退いた。
乃愛も同じように滴った血の痕が璃珈の方へと広がり始めていた。
「知っていると思うけど、貴方の血の痕と私の血が繋がったら、貴方の血を私のものとして全て吸い取るの。妖刀忍術、そのなかで一番の禁術血遁血泉」
乃愛は天を見ながら、笑っていた。
「そう簡単に私に勝てると思わないでください。鮫が!」
そう言うと、乃愛は羽を広げて上へ浮き上がった。しかし、可笑しな事に上へ飛んでも上へ飛んでも、全然地面から離れていけないのだ。
「なんで?」
その問いはすぐに璃珈から返された。
「ごめんなさい、貴方の回り2メートルだけの空間に閉じ込めさせてもらってるから、空間制御しない訳ないでしょ。なに、魔法も使うなんてくの一じゃないって、」
乃愛は目を丸くしながら、忍術と魔法によって追い込まれていることに知った。
しかし、璃珈の言葉は最初から知っている。鮫風家は、くの一じゃない、アサシンだと言うこと、体術、忍術、魔法、超能力、人それぞれ会得しているものは違えど、全て、ポセイドンから貰った力なのだと言うことを。
「力あるものには、勝てない、ただそれだけよ。強者は、弱者に勝てない、チートの強者にはね。」
その言葉を最後に、等々乃愛の血の痕と璃珈の血が繋がった。
それは、一瞬にして、乃愛の傷口から溢れる血が、璃珈の血に引っ張られるようにして、抜かれていく、血の痕が血が浮き上がり、川のようにして璃珈の足元から血管に纏わり付き、戻っていっている。
恐怖、憎悪、気味の悪さそれらに襲われながら、乃愛はただ、血を吐き続けるしかなかった。そして、乃愛の体内の血がなくなると、皮膚が青くなり、唾液ににたなにかが滴っている。
誰しもが思った。鮫風璃珈は、まるで悪魔のようだと。
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