冷徹社長の初恋
「見る気はなかったんですけどね。偶然にも、いいものが見られましたよ。社長でも、そんな人間らしい表情ができるんですね」

「ふん。うるさいやつだな。で、何の用だ」

「社長の決済が必要な書類をお持ちしました。週明けでもよかったんですけど、そろそろ失礼するので、お声がけついでに渡しておこうと思いまして」

「後で見ておく。休日にすまなかったな」

「いいえ。来た甲斐がありましたから。いろいろ面白いものが見られて」

清水さんは、くすくす笑っている。だ、大丈夫なんだろうか……
そっと春日さんを見やると、面倒くさそうにしているものの、怒ってはいないようだ。

「まだ言うか。俺にだって、プライベートはある。これからは、ちょこちょこ休みを取らせてもらうぞ。とりあえず、来週末は空けてくれ」

「承知しました。社長が自ら休日を取りたいとおっしゃるなんて、珍しいことですね。あなたは働きすぎなんです。これで少しは安心できます」

清水さんは、不意に私に目を向けた。

「町田さん」

「は、はい」

「あなたのおかげです。ありがとうございます。少々強引で、歳のいっている社長ですが、これからもよろしくお願いしますね」

「は、はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

「清水、余計なことはいいから、さっさと帰れ」

「はいはい。お二人の時間は邪魔しませんよ。それでは失礼します」

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