冷徹社長の初恋
話すべきなのかわからず、私は俯いて唇を噛み締めた。川原先生は、辛抱強く待ち続けている。話をさせたい相手が話し出すまで、どこまでも待つのだろう。

私の方が沈黙に耐えかねて、口を開いた。

「実は……」

春日さんとは、最初は本当に仕事の延長線上で会っていたことを話した。

「私の拙い意見も尊重して、見学の案に取り入れようとしてくれたんです」

川原先生は、相槌を打ちながら、穏やかな表情で聞いてくれる。

「春日さんの仕事に対する熱心な姿勢や、厳しさを見て、尊敬しました」

そう。最初はすごい人だって思ってた。

「でも、そういう姿を見ているうちに、尊敬とも憧れとも違う感情が生まれてきたんです」

川原先生は、わずかに眉間にシワを寄せたけど、この時私は気付いていなかった。

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