冷徹社長の初恋
恐る恐る、校長室で電話をとった。

「大変お待たせしました。町田です」

「町田絲さんか?」

聞き覚えのある、低く凛とした声が聞こえてきた。同時に、凛々しい顔が思い浮かぶ。

「は、はい。町田絲です」

緊張のあまり、おうむ返しのようになってしまう。

「先日の工場の見学で会った、春日剛だ」

決して、相手を怖がらせようとしているわけではないと思う。だけど、いかにも上に立つ人といった、どこか厳しい雰囲気を感じる声音に、ますます緊張してしまう。

「せ、先日は大変お世話になりました。あ、あと、子供がぶつかってしまったこたと、本当にすみませんでした」

「いや、そのことはいい。
今日は別件で連絡をした。先日の見学で、君の学校の誰かが、忘れ物をしていったようだ」

「忘れ物……ですか?」

そんな話は、誰からも出ていなかった。

〝忘れ物〟という言葉を聞いて、副校長は一度自席にもどったようだ。


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