冷徹社長の初恋
「会社で、笑顔を一切見せたことがない社長が、ふとした時に、口元も目元もゆるゆるになっているんです。というより、デレデレかな。はっきり言って、不気味なぐらいに」

そう言って、ますます笑いを堪える清水さん。

「町田さんと会う前日なんて、ずっとそわそわしてるんですよ。まあ、それがわかるのは、私ぐらいでしょうが。
だからもし、あの接待で何か誤解されているようでしたら、安心してください。社長は、町田さんを裏切るようなことは一切していません。というより、今の社長には、あなたしか見えていません。だから、許してあげてください」

話を終えて、スマートフォンを剛さんに返した。受け取った剛さんは、少し怒ったように清水さんと話し出した。

「清水、やけに長く話していたが、余計なことを言っていないだろうな?
まあ、とりあえずありがとう」

そう言って通話を切った剛さんに、目を向けた。

「剛さん、電話のことは清水さんから全く同じ話を聞いて、納得しました。疑ってすみません」

「いや。俺の方こそすまなかった。
それから、さっき見たという女の話だが……あいつは、ああ見えて男なんだ」

「えっ?遠目にも、明らかに女性だと思ったのですが。一緒にいた川原先生も、そう言っていました」

「知らない人から見たら、確かに女性にしか見えないと思う。だが、本当に男だ」

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