冷徹社長の初恋
金曜日の午後になると、子ども達の下校後は、週末を目前として教師も少し気が緩む。
でも、今日ばかりは明日、春日さんにお会いすることが気がかりで、なんだか落ち着かない。やっぱり、何かやらかしたんじゃないだろうか……と思うと、気が重い。

「はあ……」

「町田先生、大丈夫?明日のことが気がかりなんだよね?やっぱり、一緒に行こうか?」

私のため息の原因を察して、川原先生が気づかってくれる。

「いえ、大丈夫です。ちょっと厳しそうな方だったので、なんだか緊張しちゃって……」

「ああ、確かに。工場の人達も、妙にビクビクしてたというか、へこへこしてたというか……」

そうなのだ。
先日の見学中に、春日さんが姿を見せると、社員さんは一斉に背筋を伸ばして、やたら「すみません」を連呼したり、頭を下げたりしていたのを目撃した。

でも……

「そうなんですよね。雰囲気だけで萎縮してしまうというか……
でも、あの社員さん達の態度もどうかなあって思ってしまいます。
確かに、迫力のある方でしたけどね。間違ったことは言わなさそうというか……」

「そうなんだ。ああ、山田くんとぶつかった時のやりとりから、そう思ったの?」

「はい。すごく真っ直ぐな方だなあと思いました」

「へえ……」

なんとなく、会話はそこで途切れて、それぞれの仕事にもどった。



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