冷徹社長の初恋
もうしばらく歩いていると、様々な種類のハーブが植えられていた。

「ハーブは好きです。香りもいいし、お料理にも使えますからね。私もたまに、ローズマリーなんかを育ててるんですよ」

「絲は、料理をするのか?」

「一応しますよ。一人暮らしが長いですから。ただ、働き出してからは忙しくて、なかなかできないですけどね。サボることが多いです」

「そうか。一度、絲の手料理を食べてみたいものだ」

「えっ?」

「外食や弁当ばかりじゃ飽きるからな」

「毎日、そんな食生活なんですか?」

「ああ。朝はコーヒーだけ。昼は食べる時間もないことがよくある。清水が買ってきたもので済ませることがほとんどだ。夜は接待も入るしな」

「なんか……体に良くないですね。調子が悪くなっちゃいますよ。心配になります」

「絲は、俺を心配してくれるのか?」

「もちろん、しますよ」

「それは嬉しいなあ。なおさら、絲に食事を作ってもらいたくなった」

「えっ、あっ、えっと……」

春日さんが一段と優しい笑みを向けてくるから、焦ってしまう。
きっと、これは言葉のあやだ。会話の流れでそう言ってるだけだ。

「ははは。機会があったら、作ってもらおう」

なんだろう……私、からかわれているんだろうか?
でも……笑い声とは裏腹に、春日さんの目はなんだか真剣で、どこか懇願するような色が浮かんでいる気がする。

< 77 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop