冷徹社長の初恋
「心苦しい限りなんですが、素敵な春日さんにかっこ悪い思いはさせたくないので、ここはあまえることにします」

そう返すと、春日さんは今日何回目かの優しい笑みを浮かべた。この笑みを向けられると、なんか……ドキドキしてしまう。なんだろう、もっとこういう表情が見たいと思ってしまう。

二人で駐車場に向かう。
来た時には、あれほど惹かれた花々には見向きもしないで、横を歩く春日さんを、チラチラ見てしまう。

「絲に素敵だなんて言われると、嬉しいな。他のやつらにはいつも、人の心がなさそうだとか、冷徹だとか言われて、怖がられるばかりだからな」

「そういえば、見学の時も皆さん一様に背筋をピンと伸ばして、〝すみません〟を連呼してましたもんね。私、あの時何が違うなあって思ってたんです」

「違うとは?」

私の発言に興味を持ったのか、春日さんは足を止めて私の方を向いた。

「えっと……私も春日さんと言葉を交わす前は、厳しそうで、怖い人なのかもって思ってしまいました。すみません……」

「いや、いい。続けて」

「でもあの時、子どもがぶつかって、春日さんと少しお話しした時、この人は確かに厳しくて、怖い雰囲気を纏っているかもしれないけど、まっすぐな人なんだと思いました。間違ったこととか、ずるいこととか言わない、強い信念を持った人なんだと。だから、雰囲気だけでビクビクするのは、違うんじゃないかって思ったんです」

なんだか気恥ずかしかったけれど、これだけは伝えたいと思った。

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