きみこえ
甘々なお仕置き 前編 レディ、お手を拝借
ここまで出来るだけの事はやったし、見た事もない成績も取れた。
ほのかは仕方がない、次頑張ろうと思う事にし、今回は諦める事にした。
「ふぅん、そう、二十一番だったんだ」
放課後、ほのかは青い顔をし、縮こまって時雨にテストの順位を報告した。
「それは惜しかったね。でも良く頑張ったよ。偉い偉い」
そう言って時雨は笑みを浮かべ、ほのかの頭を優しく撫でた。
もしかしたら、このままお仕置きは無しにしてくれるのではないかとほのかは期待し、縋るような眼差しで時雨を見た。
「じゃあ約束通りお仕置きね。ふふ、見逃してくれるかもとか期待した?」
【!!!】
ほのかは時雨の笑顔に騙されたと感じた。
時雨の笑顔はただの笑顔ではなく、腹黒ドSスマイルだった。
「じゃあ次の休日、覚悟しててね?」
一体どんなお仕置きをされてしまうのかと不安に思いながらも時は過ぎ、約束の日がやってきた。
ほのかは言われた通りに早朝、時雨の家を訪ねた。
「おはよう、ほのかちゃん、じゃ早速だけど移動するから車に乗ろうか」
そう言って時雨はほのかの手を引き駐車場まで連れて行った。
「はい、これ」
車に乗り、渡されたのは黒いアイマスクだった。
その怪しさに、ほのかは増々不安になった。
これを装着する事で、行き先が全く分からない上に、周りからは車で寝ている人にしか見えないという優れ物だ。
【これ、しないとダメ?】
ほのかはおずおずと聞いてみると、時雨はニッコリと笑って「うん、お仕置きだからね」と言った。
お仕置きならば仕方がないと思い、ほのかは大人しく言われるままアイマスクを着けた。
その様子を確認した時雨は車のエンジンをかけ発進した。
ひたすら時雨が車を走らせている間、ほのかは感覚で右へ曲がったり、左へ曲がったりはなんとなく分かったが、どこへ向かっているのかは全く分からず、視界が奪われている事と体が揺さぶられる事で眠気が襲ってきた。
ほのかは抵抗する事なく、睡魔に誘われるまま意識を夢の世界へと旅立たせた。
次に目を覚ました時は、勉強強化合宿所か、それとも強制労働訓練所か・・・・・・ほのかは意識の端にそんな事を考えた。
ほのかは肩を揺すられ目を覚ました。
あれから何時間経っただろうかとほのかは思った。
時計も見えない為時間の感覚まで良く分からなくなっていた。
身じろぎをすると着けていたアイマスクを外され、目の前にはいつものにこにこと笑う時雨が居た。
「良く寝てたみたいだね。さ、到着したよ」
時雨は車を降り、助手席を開けるとほのかの手を引き降車させた。
そして、ここはどこなのかと気になったほのかは辺りを見回し、眼前に広がる光景に目を見張った。
「じゃーん、水族館~」
【どうして?】
てっきり恐ろしいお仕置きが待っているのではと想像していたほのかは興奮した様子でスケッチブックにそう書いた。
「うん、確かに二十番以内には入れなかったけど、それでもこんなに良い成績を取るとは思ってなかったからね。だからお疲れ様って事で今日は気晴らしに連れて来たんだ。驚いた?」
ほのかは上下に勢い良く首を振った。
そして時雨の優しさに感動した。
「そう、それは良かった。じゃあ、はい」
時雨はほのかに右手を差し出した。
その動作の意図が分からず、ほのかは小首を傾げた。
入場料かと思い、リュックから財布を探そうとすると、時雨がほのかの肩を軽く叩いた。
「やだなあ、手を繋ぐって事だよ? あ、因みに今日は一日中手を繋いで過ごしてもらうから。これがお仕置きね?」
時雨は楽しそうに笑って言った。
【!!!!】
ほのかは時雨のとんでもないお仕置きを聞き驚愕した。
水族館は好きだが、一日中手を繋ぐなんて恥ずかし過ぎるからだ。
ほのかはさっきまでの感動を返して欲しくなった。
【人目が・・・・・・】
時雨は一応保健医だ。
もしあらぬ噂でも立ってしまったらと思うとほのかは気が気ではなかった。
「大丈夫、大丈夫、高速を駆使して他の人が来ないような他県まで来てるしね、それに水族館って薄暗いからなんとでもなるよ」
【手をつなぐとスケッチブックが書けない】
そう抵抗してみるも時雨は手を引っ込める様子はない。
「スケッチブックは僕が預かるから、合図してもらえればスケッチブックを僕が支えるから。そうしたら文字は書けるよね? それとも・・・・・・僕と手を繋ぐのは嫌?」
先程までの腹黒ドSスマイルとは裏腹に、今度は子犬の様に甘える様な、縋る様な瞳の時雨にほのかは根負けした。
【嫌じゃない】
嫌な訳が無い。
ほのかは時雨にスケッチブックを預け、言われた通りに左手を時雨に差し出した。
ぎこちなく手が触れ合い、優しく握られ、互いの熱が混ざりあっていく・・・・・・。
「じゃあ、行こうか」
ほのかは恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。
時雨ならこういう時、大人の余裕で何とも思っていないのだろうかと思い、ほのかはふと時雨の顔を見た。
「あ、もう・・・・・・、まだ中に入ってないんだから・・・・・・、あんまりこっち見ないで欲しいな」
時雨も気恥しそうに頬をほんのりと赤く染めていて、ほのかはとても意外に思った。
水族館の中は薄暗く、ひんやりとしていた。
まるで海の中に居るかの様な幻想的で美しい演出、多種多様な海の生物にほのかはすぐに引き込まれた。
ほのかは水族館の中でもメインとなる一番大きな水槽の前に立ち、気持ち良さそうに泳ぐ魚の群れを見ていた。
周りは休日という事もあって、中は子連れのファミリーや、カップルが多かった。
そのカップル達が皆仲睦まじく手を繋いでいるのを見て、ほのかは妙にソワソワした。
自分達も周りからはカップルに見られているのだろうか?
それとも年の離れた兄妹にでも見えるのだろうか?
そんな事を考えていると時雨の右手が一瞬離れ、指を一本、一本絡め取る様に手を握られた。
何事かと見やると、時雨は左手でほのかの手を握り、後ろに回り込み、右手を水槽のガラスに手をつき、まるで逃がすまいとするかのようにほのかに覆い被さって立っていた。
ガラスに映った時雨の顔はほのかの肩に触れるか触れないかの位置にあった。
互いの体がぴったりと密着するその距離に、ほのかの顔は火が出るほど赤くなり、心臓は壊れるんじゃないかと思うほどめちゃくちゃな鼓動を打ち始めた。
抗議しようにもスケッチブックはなく、身動きも取れず、ただただカチカチに体を強ばらせるだけだった。
「ごめん・・・・・・、ちょっとだけ・・・・・・」
ガラスに映った時雨の口元はそう囁いた。
時雨の顔を見てみれば、そこにいつもの笑顔はなく、どこか切なそうで、苦しそうで、その顔にほのかの胸は強く締め付けられた。
動けずにそのままでいると、今度は時雨の右腕はほのかの首に回すようにしてほのかを抱き締めた。
これもお仕置きなのだろうか?
何故こんな事をするのだろう、時雨は何故そんな顔をするのだろうとほのかは思った。
恋人でもないのに、こんな事をされたら勘違いしてしまいそうで、この動悸も早く収まればいいのにと祈る様にほのかはぎゅっと目を瞑った。
ここまで出来るだけの事はやったし、見た事もない成績も取れた。
ほのかは仕方がない、次頑張ろうと思う事にし、今回は諦める事にした。
「ふぅん、そう、二十一番だったんだ」
放課後、ほのかは青い顔をし、縮こまって時雨にテストの順位を報告した。
「それは惜しかったね。でも良く頑張ったよ。偉い偉い」
そう言って時雨は笑みを浮かべ、ほのかの頭を優しく撫でた。
もしかしたら、このままお仕置きは無しにしてくれるのではないかとほのかは期待し、縋るような眼差しで時雨を見た。
「じゃあ約束通りお仕置きね。ふふ、見逃してくれるかもとか期待した?」
【!!!】
ほのかは時雨の笑顔に騙されたと感じた。
時雨の笑顔はただの笑顔ではなく、腹黒ドSスマイルだった。
「じゃあ次の休日、覚悟しててね?」
一体どんなお仕置きをされてしまうのかと不安に思いながらも時は過ぎ、約束の日がやってきた。
ほのかは言われた通りに早朝、時雨の家を訪ねた。
「おはよう、ほのかちゃん、じゃ早速だけど移動するから車に乗ろうか」
そう言って時雨はほのかの手を引き駐車場まで連れて行った。
「はい、これ」
車に乗り、渡されたのは黒いアイマスクだった。
その怪しさに、ほのかは増々不安になった。
これを装着する事で、行き先が全く分からない上に、周りからは車で寝ている人にしか見えないという優れ物だ。
【これ、しないとダメ?】
ほのかはおずおずと聞いてみると、時雨はニッコリと笑って「うん、お仕置きだからね」と言った。
お仕置きならば仕方がないと思い、ほのかは大人しく言われるままアイマスクを着けた。
その様子を確認した時雨は車のエンジンをかけ発進した。
ひたすら時雨が車を走らせている間、ほのかは感覚で右へ曲がったり、左へ曲がったりはなんとなく分かったが、どこへ向かっているのかは全く分からず、視界が奪われている事と体が揺さぶられる事で眠気が襲ってきた。
ほのかは抵抗する事なく、睡魔に誘われるまま意識を夢の世界へと旅立たせた。
次に目を覚ました時は、勉強強化合宿所か、それとも強制労働訓練所か・・・・・・ほのかは意識の端にそんな事を考えた。
ほのかは肩を揺すられ目を覚ました。
あれから何時間経っただろうかとほのかは思った。
時計も見えない為時間の感覚まで良く分からなくなっていた。
身じろぎをすると着けていたアイマスクを外され、目の前にはいつものにこにこと笑う時雨が居た。
「良く寝てたみたいだね。さ、到着したよ」
時雨は車を降り、助手席を開けるとほのかの手を引き降車させた。
そして、ここはどこなのかと気になったほのかは辺りを見回し、眼前に広がる光景に目を見張った。
「じゃーん、水族館~」
【どうして?】
てっきり恐ろしいお仕置きが待っているのではと想像していたほのかは興奮した様子でスケッチブックにそう書いた。
「うん、確かに二十番以内には入れなかったけど、それでもこんなに良い成績を取るとは思ってなかったからね。だからお疲れ様って事で今日は気晴らしに連れて来たんだ。驚いた?」
ほのかは上下に勢い良く首を振った。
そして時雨の優しさに感動した。
「そう、それは良かった。じゃあ、はい」
時雨はほのかに右手を差し出した。
その動作の意図が分からず、ほのかは小首を傾げた。
入場料かと思い、リュックから財布を探そうとすると、時雨がほのかの肩を軽く叩いた。
「やだなあ、手を繋ぐって事だよ? あ、因みに今日は一日中手を繋いで過ごしてもらうから。これがお仕置きね?」
時雨は楽しそうに笑って言った。
【!!!!】
ほのかは時雨のとんでもないお仕置きを聞き驚愕した。
水族館は好きだが、一日中手を繋ぐなんて恥ずかし過ぎるからだ。
ほのかはさっきまでの感動を返して欲しくなった。
【人目が・・・・・・】
時雨は一応保健医だ。
もしあらぬ噂でも立ってしまったらと思うとほのかは気が気ではなかった。
「大丈夫、大丈夫、高速を駆使して他の人が来ないような他県まで来てるしね、それに水族館って薄暗いからなんとでもなるよ」
【手をつなぐとスケッチブックが書けない】
そう抵抗してみるも時雨は手を引っ込める様子はない。
「スケッチブックは僕が預かるから、合図してもらえればスケッチブックを僕が支えるから。そうしたら文字は書けるよね? それとも・・・・・・僕と手を繋ぐのは嫌?」
先程までの腹黒ドSスマイルとは裏腹に、今度は子犬の様に甘える様な、縋る様な瞳の時雨にほのかは根負けした。
【嫌じゃない】
嫌な訳が無い。
ほのかは時雨にスケッチブックを預け、言われた通りに左手を時雨に差し出した。
ぎこちなく手が触れ合い、優しく握られ、互いの熱が混ざりあっていく・・・・・・。
「じゃあ、行こうか」
ほのかは恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。
時雨ならこういう時、大人の余裕で何とも思っていないのだろうかと思い、ほのかはふと時雨の顔を見た。
「あ、もう・・・・・・、まだ中に入ってないんだから・・・・・・、あんまりこっち見ないで欲しいな」
時雨も気恥しそうに頬をほんのりと赤く染めていて、ほのかはとても意外に思った。
水族館の中は薄暗く、ひんやりとしていた。
まるで海の中に居るかの様な幻想的で美しい演出、多種多様な海の生物にほのかはすぐに引き込まれた。
ほのかは水族館の中でもメインとなる一番大きな水槽の前に立ち、気持ち良さそうに泳ぐ魚の群れを見ていた。
周りは休日という事もあって、中は子連れのファミリーや、カップルが多かった。
そのカップル達が皆仲睦まじく手を繋いでいるのを見て、ほのかは妙にソワソワした。
自分達も周りからはカップルに見られているのだろうか?
それとも年の離れた兄妹にでも見えるのだろうか?
そんな事を考えていると時雨の右手が一瞬離れ、指を一本、一本絡め取る様に手を握られた。
何事かと見やると、時雨は左手でほのかの手を握り、後ろに回り込み、右手を水槽のガラスに手をつき、まるで逃がすまいとするかのようにほのかに覆い被さって立っていた。
ガラスに映った時雨の顔はほのかの肩に触れるか触れないかの位置にあった。
互いの体がぴったりと密着するその距離に、ほのかの顔は火が出るほど赤くなり、心臓は壊れるんじゃないかと思うほどめちゃくちゃな鼓動を打ち始めた。
抗議しようにもスケッチブックはなく、身動きも取れず、ただただカチカチに体を強ばらせるだけだった。
「ごめん・・・・・・、ちょっとだけ・・・・・・」
ガラスに映った時雨の口元はそう囁いた。
時雨の顔を見てみれば、そこにいつもの笑顔はなく、どこか切なそうで、苦しそうで、その顔にほのかの胸は強く締め付けられた。
動けずにそのままでいると、今度は時雨の右腕はほのかの首に回すようにしてほのかを抱き締めた。
これもお仕置きなのだろうか?
何故こんな事をするのだろう、時雨は何故そんな顔をするのだろうとほのかは思った。
恋人でもないのに、こんな事をされたら勘違いしてしまいそうで、この動悸も早く収まればいいのにと祈る様にほのかはぎゅっと目を瞑った。