続・カメレオン王子とひとりぼっちの小鳥ちゃん

◇◇◇

礼音くんと完全に別れたあの日から、
1週間がたった。



私は実家から、仕事に通っている。



今日は高校の時の読み聞かせ部の
翼先輩に呼び出され、
居酒屋にやってきた。



「琴梨、こっちこっち」



「お待たせして……すいませんでした」



「ちょっとどうしちゃったのよ?
 やつれてるじゃない!

 ご飯は?
 ちゃんと食べてる?」



「ご飯がのどを通ってくれなくて……
 無理やり食べると……吐いちゃって……」



「それに、
 高校の時の琴梨に戻ってるじゃない」



分厚いレンズのメガネと、
目まで隠れる長い前髪。



礼音くんに好かれるためのオシャレもやめて、
地味色のトレーナーとデニムのパンツ姿。



「この格好が、一番落ち着くので……」



「ま、琴梨がそのスタイルが落ち着くならいいよ。
 それで、楽になったの?
 礼音くんと別れて」



「礼音くんと付き合っていた時は、
 礼音くんの好みの女性になるように
 必死に演じていたから、
 それがなくなって、楽になりました」



「演じなくても良かったじゃない?

 礼音くんなら、
 そのままの琴梨でも
 好きになってくれたと思うけどな」



「そのままの自分って言ったら、
 今の私ですよ?

 こんなダサくて、地味な私なんて、
 礼音くんの隣にいたら絶対に釣り合わない」



「そんなことないでしょ。
 琴梨は可愛いんだから。
 私、高校の時から琴梨に言ってるからね。
 可愛いって。」



「翼先輩は、どこかずれているんですよ」



「ひどい!琴梨!ずれてるなんて!」



翼先輩は、口をぷーって尖らせた。


そして目が合って、一緒に笑ってしまった。



礼音くんと別れて、笑い方を忘れていたけど、
私はまだ、笑えるんだ。

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