続・カメレオン王子とひとりぼっちの小鳥ちゃん
山本さんの後任って聞いていたから、
勝手に女性だって思っていたけど、
なかなかハイレベルな容姿の男性だった。
あ!!
そいつばっかり見てたら、
琴梨のお話会、終わっちゃったじゃん!
俺の貴重な時間を、返せ!!
心が、噴火寸前のマグマで
ドロドロしている頃、
俺の近くにいる柳田って男の所に、
琴梨が来た。
まずい!
俺だってばれないように、
本棚の陰に隠れなきゃ。
「柳田さん」
「琴梨ちゃん、お疲れさまでした
今日は、七海ちゃんはお休みかな?」
「はい。風邪をひいちゃったみたいで。
私一人だけでしたが、大丈夫でしたか?」
「全然問題ないよ。
今日も、子供達が楽しんでくれたし。
絵本が苦手な子って多いでしょ。
琴梨ちゃんが読み聞かせをしてくれると、
子供達が絵本好きになってくれるから嬉しいよ」
「そう言ってもらえると、私も嬉しいです」
「そうそう、この前言っていた本」
「あ、川岸まどか先生の新作小説」
「今回も泣けるよ。
俺なんて、3回読んで
3回とも同じところで泣いたからね。」
「フフフ、柳田さんが泣いてるところ、
想像できないです」
「琴梨ちゃん、この本貸してあげる。
まだ、図書館にも入ってきていないから」
「お借りするなんて、悪いです」
「いいよ。
家にあるとまた読んじゃうし。
読んだらまた俺、泣いちゃうからさ。
他にも読みたい小説、たくさんあるし」
「柳田さん、本を読むのが好きなんですね」
「好きすぎて、
この仕事を選んじゃったんだけどね。
あ、来週のお話会は、
琴梨ちゃんがいないんだっけ?」
「すみません。旅行の予定が入っていて。」
「それは残念。
でも、明後日の後藤さんの結婚式で
琴梨ちゃんに会えるからいいか。
琴梨ちゃん、またね」
「はい。今日はこれで失礼します」
そして琴梨は、
すごく嬉しそうな表情のまま帰っていった。