金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「ごめんね、広斗。」

「何?なんで謝んの…?」

「初めてのデートなのに、私のワガママに付き合わせて。」

「(笑)それを言うなら、俺も来たかったから……。」

広斗は、握った手に力を込めた。

逆の手には花束。

大きくて分厚い広斗の手のひら。

私はこの手に何度も助けられた。

退院して家に帰ると…ベッドの横の棚に設置したぷにょにょの金魚鉢は跡形もなく…ママに聞いても、もちろん首を傾げるばかり。

「金魚を買った夢でも見てたの?(笑)」
……って。

瑠璃がいたという証拠は…広斗が病室のサイドテーブルに置いた、金魚型の飴玉だけになった。

溺れた時に落とした安産の御守りと金魚飴。

広斗が言うには、眠っていた私が飴玉を握っていたそうだ。

瑠璃は…確かにいたんだ。

だから、どうしてもあの場所を…確かめたい。

ー 金魚屋 あぶく ー

あの場所で瑠璃に会いたい。



「本当に大丈夫…?」

「うん。平気…(笑)」

ぎゅっと握ってくれる広斗の手があれば何を目の当たりにしても大丈夫だと自分に言い聞かせる。

廃墟と化したセメント工場の角を曲がると…いつもなら……

夢の中でなら……

“ ゆうがお楽座商店街 ”

…のアーチ型の看板が目に入って来る…

はず……。

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