金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
その…はず…。

けれど、そこには広斗が言った通り…分厚い鉄板で封鎖された入り口。

その先に…かろうじて建物の屋根のような骨組みが少し見え隠れする。

古く色褪せた三角コーン。

コーンとコーンの間に貼られたロープは、朽ちかけていて “ 立ち入り禁止 ” の板は斜めによれていた。

ゆうがお楽座商店街の看板など…どこにも見当たらない。

落書きだらけの分厚い鉄板が、長年ここに鎮座している事がこの汚れ具合から想像できた。

鉄の板でさえ…黒カビと緑の苔色に変わってしまう程の年月……。

セメント工場の影になるここは風さえも少し冷たく感じる。

「 ここが……あの商店街…。」

「立ち入り禁止…って書いてあるけど、あっちの隙間からなら何とか入って行けるはずだよ。
夢の中だけど……俺、入れたから。」

広斗は、絡まり合う夕顔の蔓をむしり取ると鉄の板の一枚を左右に動かしたり、少し浮かせたりして入り口を広げようとした。

「 怖い……広斗。」

「 ………やめとく?」

広斗は振り返って手を止める。

「 …う、ううん。ごめん…やっぱり大丈夫。」

「 ………うん。」
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