金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「こら、こらぁ〜!そこは立ち入り禁止だべ。」

「す…すみませんっ…。」

私は前へ進もうとする広斗の代わりに頭を下げた。

「ったく〜っ!最近はYouTuberだか、廃墟マニアだか知らねえけど…ちょくちょく勝手にココへ入り込む奴らがいて……。
まさかっ!お前ら金属泥棒か配線泥棒じゃねぇだろうなぁ〜っ!」

中年のおじさんは面倒臭そうに、車内から降りると少し怒ったように車の扉を強めに閉めた。

「まっ…まさかっ!見ての通り…そんなんじゃありません。」

私は慌てて首を振る。

「…………。だろうな……。」

おじさんはしげしげと私と広斗を見つめると大きな溜息をついた。

「まぁ…もう金属も何一つココには残ってねぇからな。
カップルでどんな刺激を求めるのかワシには分からんが…こんな所でイチャイチャされたら親父も浮かばれねぇんだわっ。
とっとと帰れっ!何より危険だ。」

「あの……。」

広斗はサイフから名刺を一枚取り出すと、

「ここの解体業を請け負う事になりまして…少しだけ中の様子を…と思いまして、危険なことは致しません。」

「兄ちゃんが?かい?」

「あ……自分の会社が……です。(笑)」
< 142 / 160 >

この作品をシェア

pagetop