金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「彼女…連れて…気をつけなっ。
20年以上も解体できないのは……出るからやでっ。」

おじさんは、お化けポーズをすると古びた三角コーンの位置をブツブツ言いながら直して…どこから見ても仕事という格好ではない広斗を、もう一度睨みつけた。

「おっ…おじさんっ!
さっき…親父も浮かばれねぇ…って、この商店街のこと知ってるんですか?」

「知ってるも何も…ワシの親父はこの商店街で蕎麦屋をやってたんだよ。」

夢の中での光景が思い出される…店先で煙草を吹かして瑠璃をからかったお蕎麦屋さんのおじさん……。

「知ってますっ!お蕎麦屋さん。
入り口に大きな信楽焼の狸……。」

「……ん?ああ。そう…もう20年も前の事だけど、よく知ってるね、君。」

「あ…ちょっとだけ、人から聞いて…。」

「昔は華やかな商店街だったらしいよ。ワシの爺さんが始めた蕎麦屋を親父が継いで…今思えば…古いけど昭和の香りが漂ういい商店街だったなぁ。」

「金魚屋…あぶくを知ってますか?」

「……あぶく…って、あのあぶくか。何?あんたら…ここの関係者の知り合いか?」
< 143 / 160 >

この作品をシェア

pagetop