金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「私…瑠璃に会いたい。」

「……うん。あぶくの場所を探そう…。」

私たちはおじさんの軽トラを見送って、お互いに顔を見合わせた。

広斗が握る手の平に薄っすらと汗を感じる。

こんなに広斗の緊張と鼓動が伝わってくるのに…だからなのか…?不思議と胸の痛みが和らいでくる。

なんだか…広斗が緊張していると分かれば分かるほど、私に冷静さが戻って来た。

バリケードの鉄板を少しずらして中へ踏み入ると……

私は思わず…“ わぁ……”と声を上げた。

広斗の肩越しに見た、光景…。

やはり私が夢の中で見ていた景色は無い。

そこに広がる世界に…商店街などどこにも無い。

ショーウィンドウやショーケースは勿論のこと、店先のキャラクター達も…いるわけもない。

けれど……

ただ…目を見張る程の廃墟美がそこにはあった。

絶景……。 そう絶景なんだ…。

それはそれは神々しく…悲しいまでの美しさ。

わぁ…と声を上げてしまったのは、余りにも尊く…犯しがたいこの空間に瑠璃はとても似合うと思ったから…。

それ程に、この朽ち果てた闇に落っこちる太陽の光の筋が…清らかで神聖な物であると感じるのは、そこに何か力が宿っていることが分かるから…。
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