金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「きゃっ…!」

「菜乃、気をつけて…。」

広斗は、私がなるべくガラスと水溜りを踏まないように誘導すると、目の前に数匹のコウモリがパサパサと通り過ぎた先で足を止めた。

「ここだよ…。金魚屋、あぶく。」

火元だったあぶくの跡地はそこだけポッカリ穴が空いたように燃え落ちて…更地になっていた。

「 ……ガラン…だな。」

広斗は他よりも何も無い鉄骨の骨組みを見て呟いた。

「 瑠璃……。」

穴の空いた屋根から届く陽の光が広い商店街の狭くて小さな一角を照らす。

こんな片隅で…亡くなった瑠璃を想うと…

切なくて…

切なくて…

泣けてくる。

突如…終わってしまった命の欠片が、まだここに落ちているのではないかと…

込み上げる苦しさに、その命を拾い集めたくなる…

瑠璃…

瑠璃…どこにいるの?

どこに…その命は落ちていますか?

泣けてくる…。

薄暗いここに…一筋差す光が瑠璃の命をキラキラとまるで忘れられた残留物かのように守っている…

そんな風に感じる…ここはあぶくの跡地。

生きていたら、あのおじさんより10歳ぐらい若い年齢だろうか……

瑠璃の最期に涙が溢れた。

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