金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「はい……右か、左か…。どっち?」

瑠璃は、優しく笑いながら両手に拳を作る。

「 選んでっ…右か左か。」

「 ……こっち。」

私は、瑠璃の片方の拳に人差し指で触れる。

「はいっ。」

瑠璃の手のひらから、赤い金魚に象られた包紙の飴玉が出てきた。

中身は、ピンク色の飴玉。

「 恋。

恋の始まり……かな。

その気持ちは、大事に持って帰って…そっと閉まっておくといいよ。

帰りな家に。」

「 ……。(笑)

……いいかげんっ。(笑)」

「 いいかげんかどうかは、菜乃ちゃんの未来が知ってる。」

「私の……未来。」

「そう。 未来は知りたいと思ったら、見るべきだよ。」

「……占い。 おいくらですか?」

「お代は入りません。
そのかわり…また、金魚に癒されに来て下さい。」

「(笑)
いいかげんな占い師に、また癒されに来ます。」

「 (笑) はい。 」


瑠璃は、“あぶく” の店先まで送ってくれると、目の前の水槽から1匹、金魚をすくった。

小さくて可愛い 白と赤の和金。

「 1匹、あげるよ。」

大きめのジャムを入れるくらいの瓶に…1匹。

エサは、小さなビニール袋に入れて。


家に帰ったら、名前を考えよう。


私は、大事に…その瓶を胸に抱いて、1時間に2本しかないバスの2本目に揺られて家路についた。


大事に…大切に、小さな命を持って帰った。



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