金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「広斗だけが悪いんじゃないのに…。」

「 ……いや。俺だよ。」

「私、まだ夢を諦めてないよ。」

「本当にっ。美結…」

広斗に “美結” と呼ばれた彼女は、背が高く…ノースリーブから伸びた腕は白くて細い。

「それなら、すごく嬉しいっ。」

「東京で頑張ってみるつもりっ。
だから…広斗も、もう私の事…忘れていいよ。」

「 ………。」

「忘れて…。」

「忘れねぇよ。(笑)」

夜風が彼女の横髪を拐って…とても整った容姿に、私は思わず支柱に身体を引っ込める。

「広斗も、もう一回…高卒の…」

「いや…。俺はいずれ今の会社…つか親父の会社、継ごうと思ってたし… 」

私はとにかく二人に見つからない様に、息を潜める。

「そっか。そうだよね…昔から言ってたっけ。」

「 ああ。どうせ…勉強机とは相性悪かったし…。(笑)」

「(笑)元気でね。広斗…。」

「 美結も元気でっ。」

吸っても吐いても…空気が動いてしまうので、できるだけ少量の酸素を取り込む。

「 バイバイ… 」

「 うん。」

「 広斗……っ!!」

   待って……

私には…彼女の微かな声が聞こえた様な気がした。


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