金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
私は思わず背筋に力を入れて、支柱に張り付くようにして、息を止めた。



ここ…私、居ちゃいけないところ?

聞いていいところ?……じゃなくない?

めちゃ…気マズイっ…。


広斗がもう一度、彼女を呼ぶ声に…胸に波が打ち寄せる。

他人事なのに…ひどく胸がドキドキする。


二人の間の沈黙を、私は背中で妄想する。



今、絶対…振り返れない…。


なんとなく、衣服の擦れる音。

しばらくの沈黙。切ないくらいの沈黙。

触れ合う唇は…無音。

二人の間の空気だけが、微かに揺れる。


私の心臓の鼓動が、水紋になってこの池中に広がりそうで怖い。

「 広斗…。大好きだったよ。」

「 美結…。本当…ごめんな。」

「 ありがとう…。広斗。」

彼女は、そう言うと…私のいる池とは逆の灯篭が並ぶ神社の裏の広場の方へと小走りにかけて行った。

………と、思……う。

砂利道を走る、足音がそう聞こえて…

私はもちろん、まだ硬直したまま、震える程の大きなため息を吐き出した。


めちゃくちゃ、気マズイ。

空気…少なすぎ。

別れ話、全開っ!!

しかも、別れるのに…チューするのって、何?

そして、彼女…スタイルも良くて超キレイ…じゃん。

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