妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
そわそわしながら、「すみません」とその場を離れた。
スタッフルームに飛び込んで、自分のデスクへ足早に向かう。
バッグの中に楽譜をしまい、改めて時刻を確認する。
電車の発車時刻までの残り時間を頭の中で計算していた時、スタッフルームの電話が鳴り響いた。
室内には誰もいないため、自然と電話に手が伸びた。
教室名を名乗り終える前に、電話の相手が「どうもこんにちは」と喋り出す。
「晶子さん、いらっしゃる?」
相手は、室長ミーティングが行われたあの日、私と恭介君の結婚が気に入らない様子だったあの女性だった。
心配した通り、私と恭介君が去った後、晶子先生は彼女に捕まり、長々と不満をぶつけられた。
それを聞いて、私もしばらく申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
それもあり、女性からの電話についしかめっ面で答えてしまう。
「はい。晶子先生ですね。すぐに変わりますので、少々お待ち下さい」
保留ボタンを押そうとした瞬間、「あぁ、待って待って」と呼び止められ手が止まる。
「あなた確か、羽柴コーポレーション社長の姪だったわよね」
「えぇ、そうですけど。……なにか?」