妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
意図せず挨拶の声が素っ気なくなってしまい、恐る恐る顔を上げる。
不遜な態度だと嫌な顔をされると思っていたのに、意外にも、叔父はぱっと顔を輝かせ私を手招きした。
「待っていたよ。相変わらず美羽ちゃんは別嬪さんだな。さぁさぁ早く座ってくれ」
叔父の友好的な態度を受け、相変わらずタヌキ顔ですねと心の中で毒づきながら、戸惑い顔の兄と顔を見合わせる。
過去に一度だけ、約束の時間に遅れていなくても叔父を待たせたがために「遅い!」と怒鳴りつけられたことがあった。
そんな理不尽な怒り方をした人と同一人物だと思えないくらい、叔父が私にニコニコと笑いかけてくる。
「ほら、大和もいつまで突っ立っているつもりだ。さっさと座れ!」
打って変わって棘のある声で叔父から命令され、兄がわずかに息をのむ。
真顔で声を荒げた後、再びにこりと笑いかけられた。空恐ろしくて、警戒心ばかりが膨らむ中、兄と共に空いている席へと歩を進める。
叔父と従兄弟の高志さん、テーブルを挟んで兄と私。向かいに座る面子に息苦しさを覚え、逃げるように自分の膝へ視線を落とした。
そして、料理が運ばれ食事を始めてからも、なかなか顔を上げられなかった。