妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
三人が仕事の話をしている間は黙って聞き流していれば済んだからまだ気が楽だった。
けれど叔父が両親の、特に父の話をし始めてからはまた始まったと苛立ちのため息を吐くことを我慢するのに必死だった。
父と叔父は二歳差で、昔から兄である父に闘争心を抱いていたのが嫌味な口ぶりから容易く想像できた。
学生だった頃の父の失敗を小馬鹿にしながら話すのにも腹が立った。
父が羽柴コーポレーションを引き継いでしばらくは、いつ倒産してもおかしくない状態だった。しかし、父に頼み込まれて叔父が入社してからは業績が上昇に転じ、押しも押されぬ企業になれた。
これらは会うと毎回必ず聞かされる話で、すべて俺のお陰だと得意げに話す叔父の顔が私にはひどく醜く見えた。
今日も雄弁に語るだろうと覚悟はしていたけれど、やっぱり苛立ちが止まらない。
ちらりと横を見て、苦笑いする。
兄は叔父の話をまったく聞いていない。目の前の食事に全身全霊を傾けているように見える。
以前は一緒に腹を立てていたというのに、叔父の下で働くうちにその辺りに関する処世術も兄はしっかり身につけていようだ。
「父さん、それくらいにしておきなよ」