妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
言われて、そうだった思い出す。
もともと今日は、音楽スクールのイベントの件の返事をするために会う約束をしていたのだ。
兄に先に帰ってほしいと言った時も、プレゼントの購入と合わせて、その返事をするつもりだった。
賭けてみようか。
ふっと頭を過った思いが、徐々に自分の中で強く輝き出す。
私は真顔で恭介くんを見つめ返す。
「私にイベントのお手伝いをやらせて下さい」
全力でやり遂げて、結果、晶子先生や恭介くんに頼んで良かったと思ってもらいたい。
私自身も自分に価値を見出したい。
「引き受けてくれてありがとう。感謝する。この機会が、美羽にとっての新しい一歩となるように俺もしっかりサポートさせてもらうよ」
「頼りにしてるね」
ふふっと笑って何気なく視線を昇らせると、視界に柱時計のアンティーク調の大きな盤面
が飛び込んでくる。
時刻はもうすぐ九時半になろうとしている。ショッピングモールの閉店時間を考慮すると、あまりのんびりもしていられない。
「もうこんな時間。早く恭介君の誕生日プレゼントを買わなくちゃ! 高価なプレゼントは出来ないけど、ちゃんとお祝いしたいの。何かねだって?」