妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「あら良かった! 今日は三人で賑やかなディナーになりそう」
レッスンが終わり、生徒を見送ったあと、晶子先生に「家で夕食を食べて行って」と誘ってもらったのだ。
ご馳走になってばかりなので遠慮しようとしたけれど、晶子先生に「私はすごく嬉しいのよ」と明るく笑い飛ばされてしまった。
そして今日の夕食に兄も呼んではどうかと提案され、今さっき電話をしたのだ。
「三人......うーん。いや、四人ね。きっと今日も恭介は早く帰ってくる」
晶子先生の予言者めいた口ぶりに思わず苦笑いする。
しかし、恭介君に関してはその通りで、ここ二週間はスクールか青砥家のどちらかで彼とよく顔を合わせている。
「あの子、美羽ちゃんが可愛くて仕方ないみたい。ねぇ、恭介はどう? うちにお嫁に来な
い?」
予期せぬ問いかけに言葉が詰まった。
何も答えられないまま視線を彷徨わせたけれど、心の中では嬉しくてたまらない。
同じ質問が三回繰り返された頃、私たちは青砥家の前に到着する。
恭介君の良いところをアピールしながら玄関前へと進んでいく晶子先生の後を幸せな気持ちのまま付いて行く途中、バタンと玄関が閉じた音が響いた。
反射的に目を向け、ギクリとする。
音がしたのはかつて自分が住んでいた家の玄関で、そこに高志さんが立っていた。