妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「美羽ちゃん。どうぞ入って」
玄関を開けた晶子先生に呼び掛けられ、思わず息を飲む。
私の名前が聞こえたのだろう。高志さんがこちらに顔を向けたのだ。
家の中からドアを手で抑えて私が入るのを待っている晶子先生へと急いで視線を移動させ、素早く青砥家の中へと入ろうとしたが......。
「美羽!」
高志さんの声に阻止された。
前に出かけた足を元の位置に戻して後ろを振り返ると、門扉の前まで大慌てでやってきた高志さんの姿を視界にとらえた。
「従兄弟なんです。少し話をしてきます」
晶子先生にそれだけ告げて、心が重苦しくなるのを感じながら、高志さんに向かって道を戻っていく。
門扉を挟んで話をしようと青砥家の敷地内で足を止めたが、「こっちに来い」と不満げに手招きされ、渋々門扉に手をかける。
高志さんの目の前に立ち、「何ですか?」と問いかけるも、彼はちらちらと玄関の方に目を向けるばかりでなかなか口を開かない。
不審者でも見るような顔つきでこちらの様子を伺っている晶子先生のことが気になって仕方ないらしい。